研究現場でつくりたいものがあるときどうするか
研究現場×町工場で新たなものづくりは生まれるか?
新分野ジョイントワークショップ 開催報告
株式会社リバネスは9月8日(日)、町工場の集まる地区、墨田区の中小企業センターにて、「新分野ジョイントワークショップ」を開催しました。
株式会社リバネスでは、
研究現場のちょっとしたニーズ町高はを満たすことができないかという仮説のもと、研究者と町工場の接点を昨年度からつくってきました。その結果、MAGACOMBやMakersToy
PCRと言った、研究環境を加速させる新しい機器も誕生しております。
今回の新分野ジョイントワークショップでは
第一部「町工場とのコラボ求む!」というセッションで東京大学情報科学研究科の五十嵐健夫先生に、2Dを簡単に3Dにする技術や服飾デザインへの応用など、ご自身のグラフィック技術を活かしたものづくりの現場への還元例などをお話いただき、町工場のものづくりの過程で想定されるIT技術の活用などについて議論しました。
第二部「研究現場を覗いてみよう」というセッションでは五十嵐先生を含め、工学、情報科学、バイオ、医学と4名の異なる分野の研究者にそれぞれプレゼンテーションをご用意いただき、研究環境の紹介や研究現場のものづくりにおいて困っていることのシェア、新しいテーマの相談など、これまでにない組み合わせの
マッチング機会をつくりました。
研究者と町工場の事業者の間では、
機械を固定する「ジグ」や医学用の手術に使う医療器具などのアイデアが出ていました。
第三部「新規素材を使ったアイデアを考えよう」では、
新しい材料や加工方法を持った新規素材を4点ほど紹介し、
その素材をもとに「新しい製品アイデアを創出する」「新素材を考える」などのテーマでワールド・カフェ形式のワークショップを行いました。(協力:マテリアルコネクション)
次回は3月、墨田区主催、超異分野学会にて開催予定です。
→超異分野学会の開催概要はこちら
日時 2013 年9 月8 日(日)13:00 ~ 17:00
場所 すみだ中小企業センター
(東武亀戸線小村井駅から徒歩6 分)
定員 30 名
内容 ブレインストーミングセッション
参加費 無料 (懇親会は1 名3000 円)
主催 東京都墨田区
車やバイクはもちろん、オーディオ機器、ゴルフクラブ、それぞれの商品のブランドを象徴するエンブレムは、高級感の演出や高性能、高品質などを消費者に訴える。
デザインはもちろんのことだが、言われてみないと分からない、一見しては気づかないような細部の「こだわり」までも具現化する日本の町工場の技術力がその訴求力を生み出している。
本質的な機能のみに関心を払う消費者にとっては、数センチサイズのエンブレムなどは単なる飾りかも知れないし、その細部のこだわりなどは興味の対象にすらなっていないかも知れない。
しかし、小さな文字の細部の作りこみをよくよく見て欲しい。何ミリという小さな文字の、例えば、「A」という文字の中の三角形の鋭さなどに着目して欲しい。お手頃価格なものと、ちょっと奮発したぞと思える商品とでは、やはり違いがある。良い物のエンブレムは、かなり高い技術力がなければ作ることが出来ないであろうことが素人目にも明らかだ。
この無駄ともいえるような一見気づかないような細部の品質の高さはその商品全体を象徴する。その細部において手を抜くような商品は、その他の本質的な部分においても手を抜いている商品に違いないからだ。そして我々は無意識にその細部までもこだわり抜いた風格に惹かれて、高級感や安心感を抱く。
廉価で大量消費されるものと一線を画すこだわりのものづくりは日本品質を支える町工場の職人の心意気ではなかろうか。
ここは、東京の下町墨田区である。都心からわずか数キロという場所にあり、下町情緒残る街だ。ここは江戸時代から地場産業が栄え、メリヤス、油脂、革、金属などの製造業が所狭しと並んでいる。ここの街を自転車でこぎ回れば20分近くで横断できるほどの敷地面積しかないそんな場所に3000もの町工場が存在している。
歩けば、●●製作所、●●油脂、石けんの香りがほのかに香る。プレス機ならではの重厚感あふれる金属音。墨田を歩けばすぐにそんな場所に出会える。そんな街にある工場もリーマンショック、中国の台頭により、頭を悩ませている。そんな下町の町工場が今何を考えているのか、それを伝えたいと思う。
僕が初めてであった町工場は「うちらは人情主義だからねー」と笑いながら話すねじ屋さんでした。
単価が少しでも高いところと取引するのが当たり前というのが定説だと思うのだが、彼は違った。とても印象的だった。「ビジネスとしてはまずいんだけどね。でも今のお客様をないがしろにまで、お金欲しくないんだよ。だから、儲からないだけどね。」と一点の曇りなく、笑いながら話す。ロジックとかそういう概念で仕事してるわけでない。と痛烈に感じた。
人とものでビジネスをしているのではなく、人と人でビジネスしている。だからこそ、彼は生き生きしていて、一点の曇りもなく笑えるのだろうと思った。
まだ残暑残る9月初旬、墨田の夏は終わらない。
墨田区内では、この20年間で1万件強あった製造業者が3分の1にまで減少している。高齢化や技術の陳腐化、リーマンショックの影響等、様々な理由によって製造業者が打撃を受け、廃業のスパイラルは今もなお続いている。
この7月より墨田区より委託を請け色々な町工場を訪ねた感覚では、減少の原因として大きいのは高齢化だと感じる。高齢化というのは、事業者の年齢だけではなく、そのビジネスモデルも含んだ高齢化だ。右肩上がりの時代に輝きを放っていた事業者の多くは、スピードが上がり続ける時代の流れについていけず、成長を続けることが出来なかった。下請けとして手一杯な毎日で、なかなかビジネスモデルの刷新が出来ず、グローバル化等によって事業が先細っていく。
新規事業を始めるという発想が無いという事業者も少なくないのには、リバネスという新事業を次々に立ち上げながら進むベンチャー企業をやってきた身としては衝撃を受けた。「かつてはそれでも食べていけた」。その「かつて」を引きずっていた。
一方で、明るい兆しもある。それは元気な若手のいる事業者がいるという事だ。
例えば二代目が大学を卒業して帰ってきたような事業者がいる。IT化を進め、積極的に新商品を生み出すという姿勢がある事業者がいる。面白いことを一緒にやろうとしている事業者がおり、貪欲だ。
町工場は精度の高い品物は作れるが、大量ロットには対応しにくいという事が多い。一方で研究現場は大量のものは要らないが、精度の高い研究資材が必要となる。
今までお互いに接点のなかった二者が「研究現場」で出会う。若く、事を起こすことにハングリーな次世代の職人たちが、研究現場に何かをもたらしてくれるだろう。その接点を作りたい。