シードアクセラレーターで500 万円の資金を調達する方法
株式会社リバネス 執行役員 長谷川 和宏
IT 分野の投資がほとんどであるシードアクセラレーターにおいてものづくりベンチャーを対象にした事業をス タートしたのが株式会社リバネスだ。IT 分野に比べて試作開発にかかる時間とコストが大きいものづくりを対象 に事業を展開する同社が目指すのは、新しい仕組み作りを通じた、日本のものづくりの復活だ。
増加するものづくりベンチャー
平成21年に日本経済研究所が行った大学発ベンチャー基礎調査によると、平成20年時点で大学発ベンチャー企業数は1809社。最も多いのはバイオ分野で35%、ついでIT(ソフト)分野で30%、機械・装置分野は3番目の19%を占める。上場企業数で見ると、24社の上場企業のうち、機械・装置分野はいまだ0件であり、機械・装置分野のベンチャー企業経営の難しさがうかがえる。しかしながら、平成19年度との企業数の増加数でみるとバイオ、IT分野は若干の減少傾向にあるのに際し、機械・装置分野は7%増加しているなど、今後ものづくり分野が活性化していく可能性を示すデータも生まれている。一方で、大学発ベンチャーにおける起業時の課題は、分野を問わず「人材の確保」と「資金調達」、「販路の確保」の3つ。特に平成20年のデータでは資金調達が一番の課題として挙げられている。
町工場との連携が進化を加速する
リバネスは今年、墨田区より依頼を受けて地域の町工場の活性化を目的とした区内3500社の町工場の訪問調査を行った。そんな中で見えてきたのが、町工場とものづくりベンチャーの融合による新しいものづく りのかたちだ。「町工場は優れた製造技術を持っている企業が多いですが、新しい技術やアイデアがありません。一方でものづくりベンチャーは新しいアイデアを持っていますが、製造に関する十分な設備と知識を持っていません。それならば、両者が連携すれば、ベンチャー側は設備投資の初期投資を抑えられ、製造に関するプロのアドバイスをもらえます。一方で町工場は新しい技術に触れ、取引を行う機会を作れます」。今年墨田の町工場を実際に訪問して回った長谷川は語る。さらに成長を加速するためには、初期の資金調達が重要になる。そこでリバネスでは、町工場と連携するものづくりベンチャーに対して、500万円の小口投資とハンズオン支援を行うものづくりベンチャー向けのシードアクセラレーター事業「TechPlanter」をスタートさせた。「同じ起業でも、ITとものづくりでは必要なノウハウやネットワーク、事業拡大までのプロセスは全く違います。プロトタイプ製作1つとっても、強度や安全性、量産を見越した製造体制、特許など、複合的に様々なことを考える必要がある。このプログラムは、これまで様々な規模のものづくり企業とビジネスを推進してきたリバネスだからこそ提供できるベンチャー育成のプログラムです」。長谷川は事業の成功に自信を見せる。
求めるものは社会に技術を広める熱意
近年、ベンチャービジネスにおいては、初期投資を最小限に抑え、トライ&エラーを繰り返すことでビジネスを成長させるリーンスタートアップ方式が一般的になりつつある。「ビジネスプランなんて最初はきれいに作れなくてもいい。私たちが求めているのは、研究者が持つ、ユニークな技術と自分のアイデアを形にしたいという強い想いです。修士や博士課程の学生のように社会経験がなくても構いません。失敗が続くと不安になりますが、そのときに折れずに挑戦を続けるには何よりも強い熱意が大事だと思います」。ものづくりにおいては、ビジネス規模の拡大に応じて生産設備の増強等莫大な資金が必要となる。そのため、TechPlanterではIPOではなく、プロトタイプ開発までを目標とし、アーリーステージで新たな資金を調達できるサポートを行っていくという。CVCや大手メーカーとものづくりベンチャーのアライアンスや買収など、ベンチャーの生み出した技術を社会に出すための仕組みづくりまでを視野に入れている。
集まれ、エンジニア
2014年、リバネスはTechplanterの加速に向けてものづくりに特化したビジネスプランコンテスト 「TechPlanグランプリ」を開催する。ハードウェア開発だけでなく、ハードウェアを活用したサービスなども対象となる。最優秀チームには賞金20万円に加え、Techplanterを通じて起業後に株式の10%程度と交換に500万円の資金提供を行うという。「TechPlanterにとって重要なことは、まだまだものづくりベンチャーが少ない日本において、どれだけものづくりにチャレンジしたい人たちを集めてこれるかです」。自分の技術を形にしたい、そんな想いを持つ研究者のエントリーをリバネスは求めている。
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