社会の窓、ICT 化

garekoこんにちは。GARAGEの精、ガレ子です。世の中では、毎日爆発的な量の情報やデータが生まれていますよね。交通系ICカードから得られる移動情報、各種センサーから得られる天候や電力使用量。最近はfacebookなどのソーシャルメディアで個人がデータを生成するようになり、その情報量はなんと1日あたり10テラバイトを超えるらしい。こうしたビックデータを収集・分析し、社会で役立てるかたちに活用する取り組みが盛んに行われています。でも、世の中にはもっと活用されてもいい情報がきっとあるはず!今回は、日常生活の中にある物理的にオープンソー シャルな瞬間、ズボンのチャックが空いてしまう現象「社会の窓」に注目してみました。先日、日本科学未来館で開催されたMakerFaireTokyo2013で見つけたのが、世界の“社会の窓”を守る「AegisFastenerSystem」。彼らが試作品としてつくったのは、3種類のチャック開閉感知装置です。

リール方式

rilズボンに回転量を取得するリールを取り付け、リールのひもをチャックの金具部分に引っ掛け、ひもとチャックが連動することにより開閉を感知するしくみになっている。リールは市販のリールキーホルダーに白黒模様のシールと光センサを取り付け、回転量を取得できるように改造されている。

 

 

光量方式

koryoチャックの後ろに8つの光センサを並べ、チャックの開き具合で光センサの値が変化するので、その値を読み取り開閉を検知するしくみになっている。

 

 

 

 

磁力方式

mag磁力によってスイッチをオンオフするリードスイッチを採用。ファスナー金具部分の裏側に磁石を、ズボンの内側にリードスイッチを50個使用した回路を装着し、LEDの点灯位置からファスナーの開閉度合を測り、チャックの開き具合に対応して緑、黄、赤と信号機のように色が変化する。

 

 

 

もしも、世界中の男子がこの装置を装着したズボンを履くようになり、位置情報とチャックの開き具合がリアルタイムでわかるとしたら、日常生活はどう変わるでしょうか。世界中のトイレ利用率や混雑具合がわかり、トイレ渋滞が緩和されるかもしれない。警察がパトロール用に利用すれば、性犯罪防止につながる可能性も出てくる。また、チャックの開閉状態が40%を超えた場合、自分の携帯に通知が来るよう設定し、街中ですれ違う他人や直接指摘しづらい上司に通知を送ることで、全開状態の時間を短縮することができる。しかも、相手に通知を送る度にユニセフ等に募金できるシステムを組み込めば、全人類がハッピーになるでしょう。社会の窓が、社会貢献の窓になる日も近い。 ちなみに現代で社会の窓全開状態を指摘する一番いい方法は、「自分も開ける」ことだそうです。自分の社会の窓を開け、上司に「あ、おまえ~」と言われた瞬間にすかさず「あれ、上司も~」と突っ込めばよし。心の距離がぐっと縮まる、これぞ自己犠牲のコミュニケーション。 それはさておき、社会にとって有意義な価値を産み出すウェアラブルデバイスの導入で、スマートでラブ&ピースなライフが手に入る未来がやってくるかもしれませんね。

シードアクセラレーターで500 万円の資金を調達する方法

株式会社リバネス 執行役員 長谷川 和宏

IT 分野の投資がほとんどであるシードアクセラレーターにおいてものづくりベンチャーを対象にした事業をス タートしたのが株式会社リバネスだ。IT 分野に比べて試作開発にかかる時間とコストが大きいものづくりを対象 に事業を展開する同社が目指すのは、新しい仕組み作りを通じた、日本のものづくりの復活だ。

増加するものづくりベンチャー

平成21年に日本経済研究所が行った大学発ベンチャー基礎調査によると、平成20年時点で大学発ベンチャー企業数は1809社。最も多いのはバイオ分野で35%、ついでIT(ソフト)分野で30%、機械・装置分野は3番目の19%を占める。上場企業数で見ると、24社の上場企業のうち、機械・装置分野はいまだ0件であり、機械・装置分野のベンチャー企業経営の難しさがうかがえる。しかしながら、平成19年度との企業数の増加数でみるとバイオ、IT分野は若干の減少傾向にあるのに際し、機械・装置分野は7%増加しているなど、今後ものづくり分野が活性化していく可能性を示すデータも生まれている。一方で、大学発ベンチャーにおける起業時の課題は、分野を問わず「人材の確保」と「資金調達」、「販路の確保」の3つ。特に平成20年のデータでは資金調達が一番の課題として挙げられている。

町工場との連携が進化を加速する

リバネスは今年、墨田区より依頼を受けて地域の町工場の活性化を目的とした区内3500社の町工場の訪問調査を行った。そんな中で見えてきたのが、町工場とものづくりベンチャーの融合による新しいものづく りのかたちだ。「町工場は優れた製造技術を持っている企業が多いですが、新しい技術やアイデアがありません。一方でものづくりベンチャーは新しいアイデアを持っていますが、製造に関する十分な設備と知識を持っていません。それならば、両者が連携すれば、ベンチャー側は設備投資の初期投資を抑えられ、製造に関するプロのアドバイスをもらえます。一方で町工場は新しい技術に触れ、取引を行う機会を作れます」。今年墨田の町工場を実際に訪問して回った長谷川は語る。さらに成長を加速するためには、初期の資金調達が重要になる。そこでリバネスでは、町工場と連携するものづくりベンチャーに対して、500万円の小口投資とハンズオン支援を行うものづくりベンチャー向けのシードアクセラレーター事業「TechPlanter」をスタートさせた。「同じ起業でも、ITとものづくりでは必要なノウハウやネットワーク、事業拡大までのプロセスは全く違います。プロトタイプ製作1つとっても、強度や安全性、量産を見越した製造体制、特許など、複合的に様々なことを考える必要がある。このプログラムは、これまで様々な規模のものづくり企業とビジネスを推進してきたリバネスだからこそ提供できるベンチャー育成のプログラムです」。長谷川は事業の成功に自信を見せる。

求めるものは社会に技術を広める熱意

近年、ベンチャービジネスにおいては、初期投資を最小限に抑え、トライ&エラーを繰り返すことでビジネスを成長させるリーンスタートアップ方式が一般的になりつつある。「ビジネスプランなんて最初はきれいに作れなくてもいい。私たちが求めているのは、研究者が持つ、ユニークな技術と自分のアイデアを形にしたいという強い想いです。修士や博士課程の学生のように社会経験がなくても構いません。失敗が続くと不安になりますが、そのときに折れずに挑戦を続けるには何よりも強い熱意が大事だと思います」。ものづくりにおいては、ビジネス規模の拡大に応じて生産設備の増強等莫大な資金が必要となる。そのため、TechPlanterではIPOではなく、プロトタイプ開発までを目標とし、アーリーステージで新たな資金を調達できるサポートを行っていくという。CVCや大手メーカーとものづくりベンチャーのアライアンスや買収など、ベンチャーの生み出した技術を社会に出すための仕組みづくりまでを視野に入れている。

集まれ、エンジニア

2014年、リバネスはTechplanterの加速に向けてものづくりに特化したビジネスプランコンテスト 「TechPlanグランプリ」を開催する。ハードウェア開発だけでなく、ハードウェアを活用したサービスなども対象となる。最優秀チームには賞金20万円に加え、Techplanterを通じて起業後に株式の10%程度と交換に500万円の資金提供を行うという。「TechPlanterにとって重要なことは、まだまだものづくりベンチャーが少ない日本において、どれだけものづくりにチャレンジしたい人たちを集めてこれるかです」。自分の技術を形にしたい、そんな想いを持つ研究者のエントリーをリバネスは求めている。

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クラウドファンディングで 1700万円の資金を調達する方法

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機楽株式会社 代表取締役 石渡 昌太 さん

組み立て式ロボットの開発をテーマに、アメリカのクラウドファンディングサービス「Kickstarter(キックス ターター)」を用いて 7 万 5 千ポンド ( 約 1150 万円)を調達し、国内を含めると約 1700 万円の開発資金を集め た機楽株式会社。同社が世界でも注目を集めるほどの成功を収めたその秘訣に迫る。

拡張性のある組み立て式ロボット「RAPIRO(ラピロ)」

3D プリンタによる試作

3D プリンタによる試作

同社が開発した「ラピロ」は、全身に12のサーボモータを搭載し、それを制御する基板が付属した、ロボット組み立てキットだ。2足歩行や道具の保持など、様々な動きができ、従来15万円程度だったロボットキットを約4分の1の価格に抑えた。さらに特徴的な点は、現在世界的に注目されている「RaspberryPi(ラズベリーパイ。以 下RP)」をロボット頭部に組み込めるデザインにしてあることだ。RPは、名刺サイズのオンボードコンピュータである。これを搭載可能としたことで、ユーザーはRPを追加購入 すれば、映像や音声の入出力やインターネット接続をはじめ、様々な機能をラピロに追加することができる。ユーザーの想像力を刺激する様々な仕掛けの結果、ラピロは世界中から注目を集め、組み立て式ロボットとしては日本最高額の資金調達に成功した。

キックスターターでの成功を目標にした製品開発

頭部には RP の組み込みが可能

頭部には RP の組み込みが可能

「このプロジェクトは、もともとキックスターターで資金調達できるものを作るにはどうしたらいいか、という観点からスタートしたんです」。代表取締役の石渡さんは語る。ちょうど1年ほど前、RPの販売が開始され、その可能性の高さから世界的な話題となり100万台が売れた。さらに別の話題として3Dプリンタにも世界の注目は集まっていた。「人の興味がそこにある。それならば、この2つのツールを使った製品を開発すれば、キックスターターで資金が集まるのではないかと考えたんです」。そこで、3Dプリンタを使ってRPを搭載可能なロボットを試作する、というプロジェクトを立ち上げた。

リスクヘッジとしてのコラボレーション~クラウドファンディング時代の開発手法~

ラピロの開発には、機楽以外にも3社が関わっている。3Dプリンタでの試作を担当した株式会社JMC、基板設計製造を担当した株式会社スイッチサイエンス、金型製造を担当する町工場の株式会社ミヨシの3社。実際に石渡 さんがプロジェクトの想いを伝え、それに共感してくれたパートナーだ。「開発しても売れなければ意味がない。そのためには、開発段階から売ることまで考えたチーム作りが重要です。クラウドファンディングを利用して資金調達を行う場合、最終的な調達金額は予測できませんから、いきなり人を雇うことはできません。さらに金型やプロモーションなど、実際に目標を達成した際にはすぐに販売をスタートできる体制が不可欠ですが、そこを自社のみで進めることは難しい」。ラピロ開発チームにおいては、3Dプリンタの試作造形をJMCが担い、基板の設計製造をスイッチサイエンスが担い、量産時に必要となる金型製作と射出成形をミヨシが担っている。試作品開発やその後の販売において必要な人的、製造的コストを1社で抱え込むのではなく、得意分野に応じて分担するリスクヘッジとしてのコラボレーションが重要だと石渡さんは語る。

とりあえずやってみる、では上手くいかない

国内でも少しずつクラウドファンディングが注目されるようになった現在、“とりあえず出してみよう”、という雰囲気があるが、それは危険だと石渡さんは警告する。「しっかりとした計画を立てなければ、絶対に売れません。ラピロの場合も、最初に関わるすべての会社に利益が出るラインとして1200万円という売上の目標を立て、クラウドファンディングによる資金調達で最低でも300万円という金額を超えなければ製造を行わない、という基準を設けてスタートしました」。 実際、機楽がラピロの前に挑戦した製品は、ラピロの5倍以上もメディアに取り上げられる話題性がありながら、集まった資金は170万円程度。目標であった金額に届かず開発をストップしている。 1700万円の資金を調達したという情報は、多くの人に「成功」というイメージを植え付けた。しかしながら、製造業においてそこから生まれる実際の利益は微々たるものだ。すでに海外では、米国ベンチャー企業OUYA社がキックスターターで800万ドルの資金を調達した家庭用ゲーム機「OUYA」がアマゾンでも販売されるなど、資金調達後のビジネス展開まで進んでいる事例も出始めている。クラウドファンディングを活用することで、自らのアイデアを世界へと広げるチャンスはすでに私たちの手に届くところまできているのだ。

機楽株式会社 代表取締役 石渡 昌太 さん

機楽株式会社 代表取締役 石渡 昌太 さん

機楽株式会社

 

エンジェル投資家から 900 万円の資金を調達する方法

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学生ベンチャーとして資本金 350 万円でスタートし、1 年間でエンジェル投資家から 900 万円の資金を調達 したのが株式会社オリィ研究所だ。コミュニケーションロボットの開発という、大手企業も研究開発を進める分 野において投資家を魅了したそのコンセプトと資金調達方法に迫る。

“存在感”の提供が コミュニケーションを成立させる

オリィ研究所が開発したのは、操作する人の分身 となる遠隔コミュニケーションロボット「Orihime」。 病気や怪我などで外出できない人が友人や家族と同じ 時間を共有できるようにとの想いで開発したものだ。 人間の姿をしたロボットにカメラとスピーカーを搭載 するという、ともすると PC で代用できてしまうシン プルな構成でありながら、ロボットならではの“存在 感”でお互いの存在を意識させ、まるでその場にいる かのような感覚を与えることができる点が特徴だ。

ビジネスプランコンテストで軍資金集め

起業前から最低限の資金もなかったオリィ研究所が 取ったのは、ビジネスプランコンテストに参加すると いうアプローチだった。コンテストの締切に向けて試 作品を作成し、実際に病院から出られない人や怪我を した人にロボットを実際に使ってもらうことでフィー ドバックを集めた。ユーザーの生の声を後押しにビジ ネスモデルを構築し、2011 年~ 2012 年の 2 年間で 6 回のコンテストに参加した結果、4 つで優勝、2 つで準 優勝という好成績と 280 万円の賞金を獲得した。この 賞金がオリィ研究所としての最初の軍資金となった。

理念に共感してくれる人をチームに加える

ビジネスプランコンテストで好成績を収めた結果、 様々なところから講演や取材、イベント出展の依頼が 来るようになった。「幼い頃は身体が弱く、友達と遊 んだり、遠足にいけないことがとても寂しかった。そ んな同じような経験をしている人たちに大事な人と一 緒に過ごせる時間を提供してあげたかった」。体験を もとに解決したい課題を話す代表取締役の吉藤さんの 言葉は人々の心を揺さぶる。結果として吉藤さんの周 りには理念に共感してくれる人々が集まった。そして 起業後 1 年間で、シリコンバレーでのバイアウト経験 を持つ経営顧問や医師を務めるメディカルアドバイ ザーなど、経験豊富なアドバイザリーボードを構築す ることができ、彼らがエンジェルとなり出資をしてく れた。 一般的に学生ベンチャーはどんなに想いが強くて も、経験やネットワークの面で信用性は低い。だから こそ、自分の想いを発信し続け、そこに共感してくれ る経験豊富な人材をチームに入れることがその後の資 金調達や企業の発展につながっていく。

株式会社オリィ研究所

所在地:東京都墨田区八広 4-39-7

U R L:http://orylab.com/ 

 

工学人材の為の起業資金の集め方

クラウドサービスの普及やクラウドファンディングの出現、そして 3D プリンタや FabLab によるものづくりに対するハードルの低下により、近年、起業に必要な初 期投資が大幅に下がり、起業に向けた環境が整備されつつある。

すでにシリコンバレー では、投資の流れが IT からハードウェアへとシフトし始め、体に掛けて使うフィッ トネス用センサーを開発した「Fitbit」や、スマート・ウォッチを開発し、Google 社に買収された WIMM Labs など、新しいものづくりベンチャーが続々と誕生して いる。

日本ではまだまだ成功したものづくりベンチャーの事例は生まれていないが、 この流れは近い将来確実に日本にも到来するはずだ。 そこで本特集では、広く工学分野で活用できる起業資金の集め方について、様々な 支援ツールと実際に活用した事例をもとに紹介する。

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増加するシード投資

一般的にベンチャー企業は事業規模に応じて「シード」、「アーリー」、「ミドル(エクスパンション)」、「レイター」の4つのステージに分類される。

事業規模に応じてステージが上昇し、株式市場への上場、もしくは企業買収により起業者や投資家が利益を得るという流れが一般的だ。

ベンチャー企業への投資はリーマンショック前後で急激に下落したものの、2009年以降回復傾向を見せている。

さらに、シード段階での投資が増加傾向にあり、多くのベンチャーが起業時に抱える資金調達の課題を解決するインフラが整いつつある。

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新たな資金調達手段「クラウドファンディング」

近年、急速に注目を高め、増加するシード投資を後押ししているのが「クラウドファンディング」だ。クラウドファンディングは小規模な事業者や個人が、実現したいアイデアをインターネット上で提示し、それに対し不特定多数の投資家から出資を募る仕組みである。欧米を中心に急速に拡大しているこの仕組みは、2012年の時点で、世界全体で約28億ドルの投資規模まで成長している。代表的なサイトとして、アメリカの「Kickstarter」、「RocketHub」、国内では「CAMPFIRE」があるが、まだまだ日本ではビジネスで活用されている事例は少ない。しかしながら世界では個人向け3Dプリンタ製作に約300万ドル集まったケースも生まれており、今後日本でも定着していくことが予想される。

変化するベンチャーキャピタル

ベンチャー企業が事業を拡大していく際に、資金面でバックアップを行うのがベンチャーキャピタルだ。ベンチャーキャピタルは企業に対し株式を取得するかたちで資金を提供し、最終的に上場もしくはM&Aにてリターンを得るかたちの投資を行っている。近年増加するシード・アーリー段階の投資には、2種類の新しいベンチャーキャピタルが関わっている。

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コーポレートベンチャーキャピタル

1つ目はコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)と呼ばれる、大企業からベンチャー企業に対する資金提供である。海外のICT産業を中心に活発化しているこの仕組みは、ベンチャー企業に開発環境と合わせて資金等も提供することで、社内では生まれにくい斬新なサービス開発を促進させ、その上で自社サービスの強化につなげようという取り組みだ。米国では以前よりCVCが浸透しており、主要ICT関連企業が設立し自らのシステム強化等に活用している。現在、多くの大企業では自社のみでの研究開発に限界を感じ、オープンイノベーションを推進する姿勢が見え始めている。ICT分野で始まったこの流れは、今後他分野へと浸透していくことだろう。

シードアクセラレーター

2つ目は、資金提供に加えて経営面での支援を行うシードアクセラレーターという仕組みだ。一般的にシード段階のベンチャーの多くが、技術的な強みは持っているものの経営面でのノウハウを有しておらず、結果として資金計画や事業推進の仕組みを整えることができず、発展のスピードを阻害している場合が多い。シードアクセラレーターでは、シード段階の企業に対して、株式の数%~10%程度の取得を条件に200万円から500万円程度の小口資金を提供する。さらに3か月から6か月程度の期間で経営面でのアドバイス、投資家や取引先の紹介などを行う。複数の企業が同時期にプログラムに参加するシステムを取ることが多く、企業同士が交流し、切磋琢磨できる環境が設けられている点が特徴だ。プロトタイプを開発し、次のステージに移るための投資を受けることを目標に短期集中で事業を進めることで、成功率を高めることを狙っている。海外では、2005年頃にスタートした「YCombinator」、「Techstars」、「Seedcamp」が特に有名であり、ICT関係の企業を中心に投資・育成が積極的に行われている。また、近年シリコンバレーでは投資の流れがソフトウェアからハードウェアへと移りつつあり、ものづくり系のベンチャー企業も増加傾向にある。一方で、国内でも複数のシードアクセラレーターが活動を行っている。現在のところ主な投資先をICT関連の技術を持った企業に限定している機関が多いものの、11月にはリバネスがものづくり系ベンチャーへの投資・育成を行う「TechPlanter」の開始を発表するなど、今後はものづくり系のベンチャーへの支援も活発化していくだろう。

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ビジネスプランコンテスト

少額ながら起業資金を獲得でき、さらに事業計画もブラッシュアップできるのが全国で開催されているビジネスプランコンテストだ。最近では、企業、大学、自治体など様々な機関でコンテストが開催されており、優勝すると平均的に20万円から50万円程度の賞金を手に入れることができるとともに、書類選考・プレゼンテーションという選考プロセスの中でアドバイスをもらうことができる。特にコンテストの中で注目を集めることができれば有識者とのネットワークも構築できるため、複数のビジネスプランコンテストに参加したのちに起業するケースも多い。ビジネスプランコンテストの多くは、ビジネスの種類を問わないものが多く、審査員の基準もそれぞれだ。だからこそ、テクノロジーにフォーカスした「テクノロジー&ビジネスプランコンテスト」やリバネスが行う「TechPlanグランプリ」、大学主催のビジネスプランコンテストなど、技術的な観点からの評価を受けることができるものを積極的に選ぶことがビジネスプランのブラッシュアップにつながっていく。

A-STEP(研究成果最適展開支援プログラム)

起業に向けて研究開発段階からチャレンジする場合には、JSTが実施するA-STEPの「起業挑戦ステージ」というプログラムが最適だ。シーズの実用化に向けて、大学発ベンチャー企業の設立に向けた研究開発を行うこのプログラムでは、研究者を対象にした3年間で最大1億5千万円の研究費と1500万円の起業支援経費を獲得できる「起業挑戦タイプ」と、若手研究者を対象にした3年間で4500万円の研究費と300万円の起業支援経費を獲得できる「起業挑戦タイプ(若手起業育成)」が用意されている。どちらも起業支援機関等との連携が必須となっているが、自分の研究成果をビジネス化したい場合には活用するとよいだろう。 ここで紹介した5つのアプローチは、どれかを選ばなければならないものではなく、組み合わせて活用することができる。10年前に比べ、起業を支援する環境は大幅に整いつつある。解決したい社会的課題や、研究成果を社会に生かしたい想いがあれば、これらのツールを活用することでその実現は近づくはずだ。

理系人材が町工場を加速させる

2013年3月、墨田区はリバネスと連携し、研究者や起業家、企業関係者、学生など、様々な立場の人々を集めた「超異分野学会」を開催した。
3000社の町工場が操業する墨田区で、日本のモノづくり復活を夢見る2人の仕掛け人が語った。

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きっかけ1つで町工場は動き出す

高野
超異分野学会は本当に面白かったですね。町工場の職人が普段接点のない研究者や起業家、学生と熱心に議論していたのは印象的でした。
研究者でも分野が違えばお互いの研究内容は知らないことが多いので、町工場の方にとってはさらに新鮮だったと思います。元々、超異分野学会は、分野が異なる研究者同士が研究内容をお互いに「わかりやすく伝える」ことを通して新しい連携を生み出す目的で、我々が10年前から行っている取り組みです。今年は町工場の方々が加わったことで、より多様性が生まれました。
高野
このような会は初めてでしたが、何か新しいことが始まりそうな予感がしました。
実際、今回の出会いから町工場に仕事を依頼する方がいらっしゃったみたいです。そういえば、今回は提案から実施まで3か月でした。行政のスピード感では普通は難しいです。よく実施まで持って行けましたよね。
高野
ちょうど、墨田区の町工場と外部の方々を結びつけることが新しい町工場の発展につながると考えていたのです。そこで研究者との交流を推進してみてはどうか?というご提案をいただいて、まずはやってみようという話になりました。
研究者は「新しいこと」をやるのが仕事です。その考え方や姿勢は町工場にも参考にできるところがあると思います。

設計図がないものを作れる町

高野
元々、墨田区の町工場は、明治の時代、武家屋敷の跡地に近代工業が興り手先の器用な職人たちが周りに集まったことから始まりました。大正から昭和にかけて時計やニット、カバンなどの日用品に対するニーズが高まり、多品種かつ小ロットのものづくりを行うことで発展してきたのです。墨田区と同じく町工場で有名な大田区は、大手メーカーの下請けとして大量の部品製造を行う町工場が多いので、同じ町工場といっても強みや性質は違います。
川崎など工業地域に近い大田区と、日本橋などの日用品卸の多い地域に近い墨田区では町工場に求められる機能が違うのですね。
高野
そうです。しかし、大量生産・大量消費の時代が到来すると区内には試作と多種少量生産、本社の機能だけを残し、工場を区外に移して拡張する企業が増えました。それでも残った町工場は、試作への特化、短納期の実現、高度な技術という3つを強みとして生き残りをかけて操業しています。設計図がない状態で話を持っていってもスピード感を持って試作する高い技術があるのです。しかしながら製造の中心が海外になっている今日、墨田のモノづくりはある意味オーバースペック。だからこそ、新しい発想でモノづくりを行う必要があるのです。

文化としてのモノづくりを継承するために

墨田区では産業はもちろん、文化としてのモノづくりも残そうとしている点も面白いですね。
高野
ありがとうございます。現在墨田区では「すみだモダン」と銘打った地域ブランド戦略を推進しています。墨田の想いを伝えられる商品や飲食店メニューをブランド認証したり、町工場とクリエーターの連携を推進したりする中で、墨田のモノづくり文化を新しい価値へと高めようとしています。さらに、墨田の歴史ある史跡や文化施設に並んでこれまで観光資源とは捉えられていなかった町工場や工房をモノづくり体験の場として見せることにより、観光の拠点としていきたいと考えています。
墨田区は長い歴史や文化の積み上げがある地域だからこそ、いいブランディングができると思います。スカイツリーという最先端のモノに惹かれて人が集まっている今、墨田区の本当の魅力を伝えていくプロジェクトはとてもやりがいのある仕事になりますね。

町工場に最先端の一色を加える

以前、新潟で植物工場をテーマに新しい産業を考えるプログラムを行った際にも、地元企業の方がたくさん参加していました。植物工場がなぜ今必要とされているのかを知り、自分たちがどんな貢献ができるか、アイデアがたくさん生まれていましたね。
高野
墨田区にはスカイツリーができました。あれはまさに最先端技術の塊。町工場の方々と様々な分野の方が交流する中で新しいアイデアが生まれ、スカイツリーが町工場復権の狼煙となる日を夢見ています。
やはり「最先端」には人を集める力がある。集まった多様な人たちが、新しいものを生んでいくのだと思います。
高野
この3月に策定した墨田区の産業振興マスタープランのキャッチコピーは「StayFab—楽しくあれ—」です。楽しくあり続けるためには、新しいコトを興さなければなりません。そのために今後もいろいろな方を巻き込みながら、自らも楽しんで墨田のモノづくりを発展させていきたいと思います。

次世代ロボット開発を加速するスマートアクチュエータシステム THK株式会社

2013年7月、宇宙飛行士による船外活動を支援、代行するロボットの開発プロジェクト「REX-J」が完了した。このプロジェクトにおいてロボットハンド開発の中核を担ったTHKは、「スマートアクチュエータシステム」でロボット技術の進化を狙う。

宇宙環境で人と同等の動作をさせることの難しさ

宇宙空間でロボットが宇宙飛行士の代わりを務めるためには、宇宙飛行士と同様に、各種の機器や工具類を操作できるよう、人間と同程度の握力、安定性、正確性が求められる。
さらに、作業の幅を広げるためには、作業内容に応じてロボットの手首より先のハンド部分を取り外し、作業内容に合ったハンドに交換ができることが望ましい。
これまで、ロボットハンドで強い握力を実現するためには、強い力を出せる大型のアクチュエータ*や駆動制御回路をロボットの腕や肩、胴体などといった比較的スペースのある部分に内蔵することが一般的であったが、それらのアクチュエータをいかにして小型化してロボットハンドに内蔵し、かつ人と同じ動作ができるほどの握力を有するような宇宙用ロボットハンドを開発するか――それがTHKに与えられたミッションだった。

筋肉の動きを模倣する

電気駆動式のロボットハンドは、回転モータとアクチュエータの組み合わせで動くしくみだが、各関節にモータを配置することが必要となるため、部品が多くなり大型化してしまう。
さらに、コストや消費電力という点でも課題が残る。
そこでTHKが考えたのは、人間の筋肉の収縮と同じ直線運動を真似ること。
LMガイドをはじめ、直動機構に強い自社の強みをさらに発展させ、ボールねじを利用した直動アクチュエータを開発したのだ。
指にボールねじを組み込むことでモータの回転運動を直線運動に変換し、小型でありながら30kgという人間並みの握力を達成した。
その後、ロケット発射時のすさまじい重力や−50°Cという超低温環境など、地上との数々の違いから生まれる課題をクリアしたこのロボットハンドは、2012年に宇宙に打ち上げられ、無事ミッションを終了した。

中核技術に込められたもう1つのコンセプト

今回THKが開発したロボットハンドで使われている直動アクチュエータには、もう1つの機能が組み込まれている。
それは、次世代ロボットを構築するための統合システム「SEED」だ。
これまでの産業用アクチュエータは、堅牢性・汎用性が高いものの敷居が高く、扱うには熟練した知識が必要で、また大型で多くの配線を有するため、人と共存する環境で活躍するような次世代ロボットに組み込むには不向きだった。
よって、次世代ロボットを開発するためにはベース環境を一から開発するために多くの労力がかかっていた。
THKが開発したSEEDには、次世代ロボット向けの要素部品が統合的にラインアップされており、これらを組み合わせることで、用途に合わせた多様なロボットを作り出すことができる。
SEEDで、ロボット分野におけるベース環境を整え、次世代ロボットの開発を加速しようというのだ。

センサ・アクチュエータ・OSを統合するシステム

SEEDは3つの機能により構成されている。
1つ目 はマッチ箱サイズの小型通信コントローラドライバ「SEED-Driver」。単体で小型の直動アクチュエータを 動かすメインコントローラの役割を担うことができ、さらに、CAN通信によって他のモジュールと相互通信することもできるのだ。
2つ目は、SEED以外のシステムと接続、制御するためのコンバータ「SEED-MS」だ。
ロボットは直動アクチュエータ以外にも様々なモジュールが組み合わさって構成されている。
SEED-MSではC言語ベースでライブラリを改変することができ、既存の様々なデバイスと通信することができる。
3つ目がPCとの間のCAN通信、A/D、Dio等の入出力機能を名刺半分のサイズに凝縮した「SEED-PC」。
これにより、PCベースのOSやロボット向けアプリケーション、開発環境、USB機器、インターネット環境をロボット本体に組み込むことができる。
つまり、これら3つの機能を持つSEEDシステムを利用することで、ロボットの統合環境が整い、インターフェースを統一させることができるため、開発をスマートで簡単に行うことができる。

THKが開発したSEEDは、本格的な次世代ロボットの開発のハードルを下げるだろう。
さらに、SEEDによって促進されるのはロボット開発だけではない。
大学や高等専門学校などに教育用に導入されれば、エンジニア育成も進むはずだ。次世代のロボットをつくるのは、きっと、SEEDで開発技術を学ぶ未来のエンジニアたちなのだ。

■ SEED、ロボットハンドに関するお問い合せ

THK 株式会社 技術本部 事業開発統括部
所在地:〒144-0033 東京都大田区東糀谷 4-9-16
T E L:03-5735-0227
F A X:03-5735-0229
E – m a i l:y.endo@thk.co.jp
U R L:http://www.thk.com/jp

エンターテイメントを活用して技術を普及させる Team Skeletonics

2mの搭乗型ロボットが動く映像がニコニコ動画やYouTubeを通じ世界中で大きな話題となっている。幕張メッセで開催された超巨大フェスイベント「ニコニコ超会議」にも登壇し、人々を興奮させたのは、沖縄高専の学生が立ち上げ、現在東京大学,東京工業大学,首都大学東京,沖縄高専に通いながら起業準備中の「Team Skeletoncs」だ。確かな技術力とユニークな切り口から、技術の発展に貢献することを目指している。

機構の力を最大限に活用する

動きを2倍にするリンク機構を用いて開発された、Skeletoncs。人の動きを忠実に再現する。

動きを2倍にするリンク機構を用いて開発された、Skeletoncs。人の動きを忠実に再現する。

スケルトニクスとは骨格「Skeleton」と構造「Mechanics」を組み合わせた造語である。彼らが開発した、腕や脚の動きに追従して動く外骨格ロボットは、まさに1989年原作で近未来の21世紀を描いたSFアニメ「攻殻機動隊」に登場するアームスーツの風貌さながらだ。その特徴は、すべての駆動をリンク機構により制御し、一切のパワーアシストを行っていない点にある。「多少の負荷ならば、頑張れば動かせます」。近年モータ駆動を制御して作動するサーボ機構が発達し、非常に複雑な動きを制御可能とする一方で、重量、コスト、不具合発生が増加する傾向にある。だからこそ、シンプルな機構にこだわることが、安価で故障の少ないロボットを開発することにつながったのだ。

エンターテイメントの世界から新技術を普及させる

彼らが得意とするリンク機構は人の動作に忠実に追従する。動作に連動してモータを動かし、人の負荷を軽減させるパワーアシストは、工場における重量物の操作や組立など産業分野での作業や、介護やリハビリなどの福祉分野での支援に欠かせない技術である。彼らもまた要素技術としてパワーアシストの製品を開発しているが、実用化を目指した開発ではなく、「手でつまむ力を30倍に増幅し、スチール缶を簡単に握りつぶせる」といった、魅せる技術と位置づけた開発を行っている。映画の試写会やテレビなど、エンターテイメントの世界で活用できるプロトタイプを製作し、人々の注目を集めることで技術の普及を推進することを狙っているのだ。

技術力と情報発信力を併せ持つ

skeletonics2そもそもTeam Skeletonicsは、アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(通称:高専ロボコン)で優勝した沖縄工業高等専門学校を卒業したメンバーが中心。10代の頃から機械に囲まれ、お金のない中で学校に捨てられた廃材を使ってロボットを作る日々を送った。その泥臭いモノづくりに関する経験を土台に、学校で学んだ先進的な知識を生かした開発を行う。その上で、YouTubeなどソーシャルメディアを活用できるデジタルネイティブ世代の感性も併せ持つ。「アニメに出てくるような変形するロボットに乗ってみたい」。少年のような笑顔で語る彼らの夢と情熱が、新しい技術を普及させるカギとなるかもしれない。

Team Skeletoncs

2013年版透明マント 南洋理工大学 Dr. Zheng Baile

漫画や映画など、人間の想像の世界に何度も出現してきた「透明マント」。この夢の機能を持つデバイスが2013年にカリフォルニアで行われた「TED2013」でお披露目された。登壇者は、シンガポールの南洋理工大学のZheng Baile博士。MITが選ぶ35歳以下のイノベーター「35 INNOVATOR UNDER 35」にも選ばれた実力者だ。

透明になるメカニズム

透明な四角い箱が蛍光色の筒の前に置かれた瞬間、筒が消えた。透明な箱を通して観察されるはずの筒は全く見えず、背景の壁だけが見えたのだ。この不思議な箱の素材は石灰岩や大理石の主成分の炭酸カルシウムの結晶、カルサイト。

カルサイトが特殊な光特性を持つことは広く知られている。高校の授業でカルサイトを通してモノを見る実験をした人も多いのではないだろうか?この場合観察対象は二重に見える。複屈折と言われるこの現象は、光が偏向の状態により2つの光線に分解されることで説明することができる。Zheng教授はこのような性質を持つカルサイトを2つ組み合わせることで、光が物質を迂回して進むように設計した。

産業応用を狙う

透明マントと題されたテクノロジーは今まで何度となく登場してきた。しかし、素材にレーザーを用いて、マイクロメートル、もしくはナノメートルサイズの複雑な微細加工を施して光を対象から逃すように設計したものがほとんどであった。そのため生産コストが高く、産業上の応用が困難であるという課題を抱えていた。しかし、今回発表されたものは非常に安価な材料を単純に組み合わせたデバイスであることから、産業上の応用やスケールアップが大きく期待されている。使い古された物質がエンジニアのアイデア一つで一躍注目の物質に豹変した。

乗り越えるべき困難

このデバイスが「透明マント」として機能する条件はまだ限られている。レーザーオイルと言われる特殊な油に囲まれた空間に置くことが必要な点だ。光の屈折を特殊な条件でコントロールすることでのみ、この現象が起きる。見方を変えれば、この条件を再現できるような光学的なトリックを思いつけば、人間は光をコントロールする道具を一つ得たことになる。
開発者のZheng博士は光を対象から逃す技術だけでなく、音や熱をも対象から逃すような技術の開発を進めている。あらゆる電磁気の波をコントロールするデバイスが出現するのももうすぐかもしれない。

透明マントにより見えなくなったピンク色の紙を丸めた筒

透明マントにより見えなくなったピンク色の紙を丸めた筒

実験で使われた2種類のカルサイト。屈折率をもとに形状を計算して制作している。

実験で使われた2種類のカルサイト。屈折率をもとに形状を計算して制作している。